蟹パンの気持ち






「…………」


男は呆然とした。只今の時間、深夜1時。その時間にある男は尋ねてきたのだ。コンビニ袋を大量に引っさげて。


「ぁ?何ボーっとしてンだよ。おら、さっさと飲もうぜ」

「…………デスマスク……」


 紫色の短髪の男は大量のコンビニ袋を持った銀髪の男の名前を呼んだ。銀髪の男、デスマスクは袋から酒の入った
缶とつまみで買ってきた菓子を出す。


「だから何だっつーの!!!今日飲む約束しただろ? 時間もピッタリ1時。飲むっつーから態々この
俺様
酒とつまみを買ってきた。文句あんのかコラ」

「ィャ、時間とかそう言うのではない……買ってきた事にも感謝する
、一つだけ言わせて貰おう……。
何故だ…何故つまみが
全て蟹パンなのだ?俺には全く理解不能だ」


 その通り。紫色の髪の男、シュラが先程から気になって気になって口出ししたくて溜まらなかったのはこの袋の中に
大量にあるお●つ探●隊の蟹パンの事だったのだ。(一袋税込み百五円)
如何見ても
コンビニ内の蟹パンを買い占めたようにしか見えなかった
 て言うか買いすぎ。


「別にいいじゃねぇかよ。減るもんじゃねぇし……」

「寧ろ
増える蟹密度がな…。
…まぁ、良い…然し何故この時間なのだ?…まぁ、俺は何時に寝ようと
6時起床だが」


 健康発言をして缶ビールを開け飲むシュラを見据えてデスマスクはヘッと乾いた笑いを吐き捨てた。


「良いんだよ。何となーく周りが寝静まったあたりに飲むのも悪くネェ」

「………そうか………。…然し久しぶりだな…お前とこうして飲むのも…」

「あァー…何世紀振りだ?」

「三週間振りだ」


 間髪入れず真面目に返すシュラの様子を見てデスマスクはチッと舌打ちして酒を飲み乍相手に
聞こえない声の音量で呟いた。「ジョークの通じネェ奴」と。
 それでもデスマスクには長く感じたのだった。シュラと一日でも会わないだけで心の中のムカムカが晴れなかった。
寧ろ増幅していく。だが、シュラの姿を一目見るだけで心の中の靄が消えるのだ。
何故かは本人も知らない。何故、こんな昔からの腐れきった縁の無愛想な野郎を見ると安心出来るのか
……何で他の仲間じゃなくて今まで付き合ってきた女じゃなくてコイツなのだろうと思った。


「デスマスク」


 シュラは彼の名を呼び、缶ビールを右手に持った侭外に出た。月明かりがシュラを照らしていた。
その姿が素直に綺麗だとデスマスクは思った。


「月見とは季節外れだが…月を見乍、酒を飲むのも悪くは無いだろう…?つまみの蟹パンも悪くは無い………」


 フッと口元に笑みを浮かべシュラは袋から小さな蟹の形をしたミルクパンを摘んだ。その様子は明らかに
様になっていないが、デスマスクにとっては如何でも良い事だった。
月明かりを浴びた相手に見惚れていた為、硬直していた。
見事に明るい満月より空に降る億万の星より何よりシュラが綺麗で愛しくて溜まらなかった。
 自分でも可笑しいとは思う…然し、感情は如何しようもないのだ。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い
…理屈など必要ない。その証拠に先程から鼓動が止まらない。


「……デスマスク?如何した……?」


 もう一度名前を呼ばれ、デスマスクは自分の頭をワシャワシャと掻き、外に出て酒を煽った。


「…何でもねー……」


 珍しく覇気の無い声で呟く。


「……顔と言葉が矛盾してるな…」

「煩ェ!何でもねーったら何でもねーんだよ!!」

「怒るのは図星の証拠だ」


真顔の侭、シュラはデスマスクを見据えた。


「そうかよ」


 そう言って相手の肩に手を回し自分の胸に引き寄せた。シュラの手中にあった缶ビールと蟹パンは地に落ちた。


「…………」

「お前の所為だ」

「…何がだ…?」

「お前の所為で俺は可笑しくなっちまってる。こんな無愛想で腐れ縁でデケェ男によ……何で惚れちまったんだ俺ァ!!」


 叫び乍、抱きしめる手に力が篭る。


「一気に吐き出したな……深夜と云う事を忘れていないか?」

「んなモン、深夜も朝も昼も俺の知ったこっちゃねぇ……。責任取りやがれ」

「……………」

「俺ァ、テメェに惚れてンだ。其れなりの返事ってのは礼儀だろうがシュラさんよォ?」


 酔いが回ってるのか、呂律が回っていないダラダラしたその辺のゴロツキ口調で赤い顔の侭、
デスマスクはシュラを抱きしめる。


「普通そう云う物は相手に無理強いする物ではないと思うが……」

「煩ェ。俺はするンだよ」


 相変わらずの俺様口調でデスマスクは言うとシュラは小さく鼻で笑った。


「……………てる……」

「あ?」


 抱きしめられた手を解き、シュラは背を向け月を眺めた。


「二度同じ事は言わん」


 妙に熱くなった顔を見られたくない所為か、シュラは目を背け傍らにある僅かだけ残った缶ビールを一気に飲み干した。
 然し、デスマスクの方は満足そうに笑みを浮かべ菓子袋に手を突っ込み、片手一杯の蟹パンを複数齧りついた。








『お前を愛している』


 そのベタな告白はデスマスクにとって究極の殺し文句だったのである。




END







■泉瀬那様よりコメント■
ェト、小説のコメントと言うか言い訳なのですが…ぶっちゃけゴメンナサイの勢いでス…(ガタガタ死)
最初ギャグにする予定だったのですが、どんどんシリアス臭く…そして蟹も山羊も似非臭く(核爆死)
己にとって蟹はヘタレ攻めデス(射殺爆)色々予定とは大幅に変わりましたが何とか終わりました(爆)
因みに蟹パンを食べ乍打ってたのでこんなネタに(滅)
初投稿がこんな矛盾だらけで申し訳なく……ッ(|箱|□゜;(然もタイトルと中身一致シテネェとか/爆)
恐れ多くも苦情とか苦情とか苦情とか感想とか苦情はいっぱい受け付けておりますデスッ。
お疲れ様でした!(><)







■以下毎度同じくヒムカイ★の感想付き(爆)■
蟹パン持ってかっこつけても決まらないからシュラ…!!!(山羊激萌)
されども蟹から見れば蟹パンだろうがなんだろうが、山羊愛なんですよ!!!
月明かりの下の山羊はそれはもう男前美人でしょうが、背景はヘタレです。
コレは子供の落書きでしょうか…?(痛)
相変わらず自虐性の高いコメントですが、いやしかし、しかしこれは…(煩悶)
背景は見ずに、泉様の文章だけ読んだ方が身の為です。眼にも心にも優しいです。
それにしてもラブです。ラブなのですよ
幸せになりおってからに、蟹めが…!!!!羨ましい!
幸せカップル万歳ですよ、もう!いやむしろこのまま結婚してくれたってい以下略!
素で蟹パンを大量購入してくる蟹に、きっと山羊はほだされたのだと思います(笑)
蟹が蟹パンを食べているのを見て、共食いしているとか山羊がこっそり思っていそうですが!
むしろ蟹が、山羊が蟹パン食べている姿を見て萌え萌えしてそうです。
……段々と
自分の妄想が酷くなってきたので終わっておきます。

泉様、ラブな幸せカップルを有難うございました!




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